利益率のよい商材やサービスを取り扱って粗利率を高めることは事業にとってプラスの要素となりますが、高ければ高い方がいいかというとそうでもありません。
利益率を高めても利益が大きくならなければ意味がないということを、粗利率と利益との関係から考えてみたいと思います。
実は、粗利率という用語は会計の正式な用語ではありません。粗利率とはさまざまな商売の現場で使われている用語であり、業種や業界によって意味合いが異なるものですが、一般的には、売上高から変動費を差し引くことで計算される利益を粗利益といい、粗利益を売上高で割ったものを粗利率といいます。また、変動費とは、仕入や外注費など、売上高に比例して増減する費用をいいます。
粗利益 = 売上高ー変動費
粗利率 = 粗利益÷売上高×100%
つまり、粗利益とは、商品や製品、サービスなどを売り上げることで、仕入れなどの費用を差し引いて直接的に得られる利益のことであり、粗利率とは、売上に占める粗利益の割合となっています。
売上が増えても、それ以上に仕入などの変動費が増えてしまっては、利益は増えないどころかどんどんお金がなくなってしまいます。事業の利益の源泉が粗利益となっています。
粗利益を意識することで、見えにくかった経営が数字で見えてくることになります。
粗利率を高めるということは、一つの商品やサービスを販売して得られる利益が大きくなることから、粗利率の高いビジネスをすることは絶対的によいことかとも思えますが、実は、単純にそういうことでもありません。
今回は、実際の事例をみながら「粗利率」と「儲け」の関係を紐解いて行きたいと思います。
そこで、起業を考えている鈴木さん(30代男性)という方に登場していただきます。鈴木さんは、どのようなビジネスを行うかを考えています。どのビジネスが一番儲かるかというシミュレーションのお手伝いをしてみたいと思います。
鈴木さんは、あるエリアでお店を使った事業展開を考えています。
今、頭に描いている事業は次の3つです。
この3つの事業のイメージを具体的にモデル化していきながら、どの事業がベストな選択かを検討してみたいと思います。
まず、ピザ専門店について、検討してみたいと思います。
鈴木さんは以前、ピザ専門店で働いておりピザには思い入れがあります。
そこで、とびきり美味しいピザを提供したいと考え、試作品を作りながらメニューを考えていました。
通常、ピザの原価率というと、10〜20%が相場といわれていますが、鈴木さんのこだわりから、いい原材料をたくさん使うことにしました。すると、思った以上に原価がかかり、平均販売価格が1400円に対して原価が450円ほどとなりそうです。
お店は座席数が20席程度の小さいもので、ランチ、ディナーを含めて平日、休日で平均すると2回転となる見込みです。
一方で、ある程度の集客をするために道路に面した1階の物件が必要であったため、店舗の家賃が15万円と少し高めになりました。
また、お店をオープンするために、敷金やお店の内外装工事などで、銀行から5年返済で300万円の借入が必要となりそうです。
これを表にまとめると、こんな感じです。
業種 | ピザ屋 |
平均販売単価 | 1,400円 |
平均原価 | 450円 |
店舗家賃 | 15万円/月 |
人件費 | 30万円/月 |
その他費用 | 15万円/月 |
借入金 | 300万円(5年返済) |
これで1ヶ月の利益を計算してみると
粗利益 = (@1,400ー@450)×20座席×2回転×営業日数25日 = 95万円
粗利率 = 95万円÷140万円 = 68%
となり、粗利率は68%で粗利益は95万円獲得できることになりそうです。
次に美容室について、粗利率を検討します。
美容室の場合、お客様の支払ってくださる料金に対して直接仕入れが必要になるものはないため、粗利率は100%と考えることができるかもしれませんが、実際にはシャンプーやカラーなどの美容材料費用がかかるため、一人当たり400円程度は原価が発生します。
座席数は3席で、土日平日を平均した1日の回転数は4回転を見込んでいます。
平均単価は4,000円となる見込みです。
一方で、ある程度の集客をするために道路に面した1階の物件が必要であったため、店舗の家賃が15万円と少し高めになりました。従業員も経験のあるスタッフが1名必要となります。その他の費用も広告費などの負担が大きく毎月30万円程度が必要になりそうです。
また、お店をオープンするために、敷金やお店の内外装工事などで、銀行から5年返済で500万円の借入が必要となりそうです。
これを表にまとめると、こんな感じです。
業種 | 美容室 |
平均販売単価 | 4,000円 |
平均原価 | 400円 |
店舗家賃 | 15万円/月 |
人件費 | 35万円/月 |
その他費用 | 30万円/月 |
借入金 | 500万円(5年返済) |
これで1ヶ月の利益を計算してみると
粗利益 = (@4,000ー@400)×3座席×4回転×営業日数25日 = 108万円
粗利率 = 108万円÷120万円 = 90%
となり、粗利率は90%で粗利益は108万円獲得できることになりそうです。非常に高い粗利率ですね。
最後に雑貨屋さんについて、検討してみたいと思います。
鈴木さんは以前から輸入雑貨が大好きで、前からやってみたかったお店のイメージがありました。
そこで、今回のタイミングで検討してみようということになりました。
雑貨屋さんは取り扱う商品によって粗利率は変わるのですが、鈴木さんは特段の仕入ルートを持っているわけでもなくお店の規模も大きくないため、雑貨の商社などに商談をしていった結果、平均的な粗利率は50%程度になりそうです。
一方で、店舗の家賃を押さえるために、大通りから1本入った通りのビルの2階の物件に目をつけており、そこなら家賃が月額10万円程度に抑えられそうです。スタッフなども当面は採用せず鈴木さん1人でやる予定です。
また、お店をオープンするために、敷金やお店の内外装工事などが必要なのですが、それほど手を入れなくても大丈夫な物件であったことから銀行からの借入は5年返済で100万円におさえることができそうです。
これを表にまとめると、こんな感じです。
業種 | 雑貨屋 |
平均月商 | 80万円 |
店舗家賃 | 10万円/月 |
人件費 | 採用しない |
その他費用 | 5万円/月 |
借入金 | 100万円(5年返済) |
仕入原価が50%程度と少し高くなってしまいそうなので、粗利率は50%となります。
以上のように、それぞれの事業の粗利率は以下のようになります。
このように、粗利率だけをみると美容室が圧倒的に高く、儲かりそうな気配があります。
さて、ここからが問題です。それぞれのビジネスにかかる固定費を比べてみましょう。
ピザ専門店 | 美容室 | 雑貨屋 | |
人件費 | 30万円 | 35万円 | 0円 |
家賃 | 15万円 | 15万円 | 10万円 |
その他費用 | 15万円 | 30万円 | 5万円 |
固定費合計 | 60万円 | 80万円 | 15万円 |
このように、毎月の固定費が一番大きいのは美容室の80万円、ピザ専門店が60万円、輸入雑貨屋が15万円と一番安くなっています。
ここで、儲けを考える上で非常に重要な利益の区分をご紹介します。
それが、営業利益です。
営業利益とは、売上から営業するために要した全ての費用を差し引いた本業からの儲けを表す利益となります。
営業利益 = 売上高 ー 変動費(原価を含む) ー 固定費
営業利益は、事業を行うことによって稼いだ利益であるため、先ほどの3つの事業についても、儲けを考える上では、営業利益を計算することが非常に重要となります。
ピザ専門店 | 美容室 | 雑貨屋 | |
粗利益 | 95万円 | 108万円 | 40万円 |
固定費 | 60万円 | 80万円 | 15万円 |
営業利益 | 35万円 | 28万円 | 25万円 |
営業利益を比較すると、粗利率では美容室を下回るピザ専門店の営業利益が35万円と一番高くなっています。
このように、事業の儲けを考えるときには、粗利率だけではなく、固定費の回収までを考えた営業利益で判断することが重要となります。
粗利率だけではなく、売上を稼ぐためにどのくらいの固定費が必要になるのかをしっかり理解しながら、営業利益を残せるビジネスモデルを作ることが、事業の成否を分けることになりますので、事業計画の策定時や、毎月の採算管理においては、粗利率と固定費の両方を意識してください。
売上を増やしていく、事業を拡大していく。経営目標を達成するためには、会社やお店で働くメンバーが目標意識を持って日々の仕事に取り組んでいく必要があります。
そのような中で、具体的な業務の目標設定の指標に使われるのがKPIです。KPIは、設定する意味をしっかり理解するかどうかで、結果が大きく変わってきます。
今回は、業績アップに直結するKPIの使い方について、事例を交えて解説したいと思います。
KPIとは、「Key Performance Indicator」の略であり、重要業績評価指標を意味するものです。
このように、KPIは業績を評価するための指標です。
会社でも、お店でも、事業経営であることに変わりありません。ボランティアや慈善事業として会社やお店をしている場合を除いて、経営するということは少なからずいい業績を残すことを目的としています。
KPIは、目標とする業績水準を達成できているかどうかを計測する指標ということになります。
それでは、「業績」とは何かということになりますが、経営の結果と捉えると、売上高であったり、利益であったりします。
もう少し、業績という意味を考えてみたいと思います。
先ほども触れましたが、会社やお店を経営する目的を経営学的にいうと、
投下した資本でどれだけ利益を上げることができるか?
ということになります。
もう少しわかりやすくいうと、
経営することで元手を少しでも増やす
ということです。
すなわち、会社やお店を経営することでどれだけお金を増やすことができるか?ということが業績の意味するところです。
元手を増やすということから考えると、業績を上げるというのは、利益を増やすということになります。
ここで、会計の話を少しします。
会計では、利益を次のように考えます。
売上高ー仕入ー諸経費=利益
これは、簡単にいうと、商品やサービスを販売して得た売上高から仕入や諸経費で出て行った支払いを差し引いたものが利益、ということになります。
ここからわかることが、業績=利益というのは、いくつかの構成要素に分けられるということです。
業績アップということを会計的に考えると
ということになります。
このように、業績を構成要素に分けるという考え方が、KPIと密接に関連してきます。
繰り返しになりますが、KPIは、業績を評価するための指標です。
先ほどの会計の話をこれに当てはめて考えると、KPIは、「売上」を評価する指標、「仕入」を評価する指標、「諸経費」を評価する指標とも言い換えることができます。
このように考えると、KPIをかなり具体的なプロセスや業務に関連づけて設定することができるようになります。
売上は、会社であれお店であれ、事業経営をしていく上で最も重要なお金を供給してくれる源となるものです。
したがって、この売上を増やしていくための行動を数値化したものがKPIとなっているかどうかがポイントとなります。
ここで、売上はどのようなプロセスで獲得できるかというと、例えば、
となります。ここにKPIを設定できれば、売上の評価指標としてうまく機能します。
例えば、「お店に来店してもらう」という結果に対するKPIとしては、
というような来店客数と関連の高い指標をKPIとして設定します。
また、商社の「受注をとる」という結果に対するKPIとしては、
など受注につながる数値をKPIに設定すると効果的です。
仕入は、売上に比べると重要性が落ちるように捉えられがちですが、実は仕入も業績には重要な影響を与えます。
先ほど紹介したように、業績は「売上」ではなく「利益」です。
売上がいくら増えても、それ以上に仕入コストがかかれば、利益は減ってしまいます。
売上が増えても業績が悪くなることもあるということです。
逆に、売上が伸びなくても、仕入コストの圧縮ができれば、業績=利益は増えます。
このように、業績アップという観点からは、仕入は非常に重要なのです。
それでは、仕入に関するKPIはどのように設定すればよいでしょうか?
これも業種、業態によって変わる部分はありますが、基本的には、必要な品質水準を確保しながら、できるだけ安価に安定調達するか?を達成する数値指標を設定することが重要です。
仕入を評価するKPIの例でいうと、
というような指標が考えられます。
また、仕入れたものを在庫で管理するような業種であれば、在庫の管理状態を評価する指標も有効です。例えば、
といった、適正な在庫水準を確保するための指標をKPIとして設定すると効果が発揮されるケースもあります。
人件費や家賃や広告費など、経営をしていくためには様々な経費が必要となります。
先ほどの仕入と同様に、諸経費のコストダウンをすることで業績はよくなります。
したがって、業績アップのためには、諸経費も重要な要素となります。
ただし、諸経費というのは、いろいろなものがあります。例えば、主なものだけでも
など、会社によって、お店によって、様々な経費が存在します。
これを全てKPIで管理することは難しいですし、そこまでやる必要はありません。KPIを設定すべき項目のポイントは、
となります。
KPIを設定して管理することは手間と時間がかかります。
そのため、業績への影響が大きい項目(金額が大きいもの)を選ぶことがポイントとなります。
また、例えば、コストダウンの余地がない家賃などをKPIの対象にしても意味がないケースは、対象外にすべきです。
さらに、メンバーのモチベーションを下げないという点も重要です。KPIで管理してメンバーのモチベーションが下がってしまえば、本末転倒です。
このような点に注意して、個別にKPIの設定を検討していきます。
それでは、KPIをうまく活用している具体事例を紹介しましょう。
受注の窓口として、WEBサイトを活用している会社も増えてきました。
今回ご紹介するのは、自社で集客用のホームページを作成し、そこに見込み客を集めて問い合わせを得る、という営業導線を作っている会社の事例です。
KPIとして、「ホームページの閲覧数」、いわゆるページビューを設定しています。
この会社では、ホームページに訪問した見込み客の0.1%が問い合わせをしてくれるという過去の実績から、ページビューをいかに増やすかが重要な業績評価指標と考え、KPIにページビューを設定しました。
具体的には、KPIであるページビューを「1週間に1万ページビュー」と設定し、ホームページの運用を開始しました。
ページビューの測定には、無料で利用できるグーグルアナリティクスを利用し、毎日のアクセス状況、ページビューを集めているページを把握しながら、サイトの更新や記事の作成をしていきました。
グーグルアナリティクスは無料で使えるアクセス解析ツールですが、多彩な機能がついており、これだけあれば通常のアクセス解析は十分できる便利なツールです。
運用当初は、ページビューが伸び悩んでいましたが、明確なKPIを設定したこともあり、ホームページの運用担当者はKPIの達成に集中することができ、運用3ヶ月目には目標としていたKPIである「1週間に1万ページビュー」を達成することができました。
この結果、ホームページからの問い合わせも増えて、売上アップに貢献できたという成果につながりました。
次は、従業員の残業が減らず、人件費負担が重くなっていた会社が、KPIを設定して生産性を改善した事例です。
こちらの会社は、いくつかの店舗を経営していたのですが、店舗スタッフの勤怠管理をタイムカードを使っていたこともあり、スタッフの勤務時間をタイムリーに把握することができていませんでした。
そのため、毎月の勤務時間を集計した結果、思った以上に残業時間が発生していたことに気づくということの繰り返しで、残業代の支払い負担が重くなっていました。
そこで、残業代を適正水準に抑えることを目的として、KPIに残業時間を設定しました。
また、これに合わせて、スタッフの勤務時間をタイムリーに把握するために、クラウド勤怠管理ソフトであるKING OF TIMEを導入しました。こちらのクラウド勤怠管理ソフトは、一人当たり数百円というコストで導入できる低価格なソフトですが、勤務時間のデータがいつでもパソコンやスマホで確認できることから、店舗での勤務状況をタイムリーに把握することができるようになりました。
KING OF TIMEを導入したことで、月中であってもスタッフごとの勤務時間がわかるため、残業時間が増える傾向が見えたら早めに対応ができるようになりました。
これによって、無駄な残業時間を減らすことができ、結果的に残業代の支給が減ったことで、人件費コスト負担を減らすことができました。
KPIは達成したい目標を明確に設定することで、非常に効果的な業績評価指標となります。
達成したい経営目標や業績を明確にして、その業績を達成するためにやるべき業務を検討しながら、KPIを設定していきましょう。
「今の従業員はモノを売ってそれで終わりと思っている。」
これは私が社長から聞いた言葉です。
実際このような従業員の方が多いのが実情ではないでしょうか?売りっぱなしではだめ。きっちり回収までしてはじめて商売です。
今回は、資金繰り管理に課題を抱えている会社にどのような特徴がみられるのかについて解説します。
昔は、納品時に営業担当者が現金あるいは手形等で商品代金の回収まで行っていましたが、近年では銀行取引の簡素化や業務効率化等のため債権管理を経理部門で一元管理していることにより、営業担当者は納品が終われば業務完了と思われている方が多いことを嘆いていらっしゃる社長がいました。
このような企業では問題は特に顕在化しておりませんでしたが、現経営者から後継者の方に事業承継した場合には資金繰りに不安が残ることは否定できず、他社では実際に問題が顕在化しているケースも多く見られます。
具体的な問題としては下記のようなケースが挙げられ、このような問題を抱えている企業は少なくないと思われます。
なぜ、このようなことになってしまうのでしょうか?
資金繰り管理ができていない会社には特徴がありますので、一つずつみていきましょう。
まず特徴として挙げられるのが、顧問税理士に会計を任せっきりにしており、経営者・財務担当者が自社の状況を把握していないことです。
顧問税理士が作成した月次試算表を毎月確認しているケースも見受けられますが、その確認時期が早くて1ヶ月後、遅い場合には2~3ヶ月後ということも珍しくありません。
これでは、いつまでにいくら資金が必要であるかが目に見えず、結果的に月次試算表が完成する頃に資金がショートしそうになり、慌てる姿が目に浮かびます。
しかも、試算表だけ眺めてみても、資金繰りはなかなか見えてこないのではないかと思います。
この問題を解決するためには、経理体制を顧問税理士に丸投げするのではなく、財務状況をおカネの流れが見える形に落とし込んだうえで、タイムリーに把握できる体制を整える必要があります。
自社で会計入力を行い、財務状況を即座に確認できるようになったとしても、これだけでは十分とは言えません。
各種残高があるべき数値になっているかまで確認することが重要です。
つまり正確性です。
実際、経理スタッフ等が常に忙しくしているため、部長クラスの管理職まで資料の作成に従事しており、各人が作成した資料を誰も確認することなく、会計入力していたところ、後々誤りが見つかり修正してみたら資金繰りが首の皮一枚でつながっていたということもありました。
このように自社で入力した数値が間違っていたのでは、その財務状況は何の意味も持ちません。
とはいえ、人間誰しも間違うことはあります。これを防ぐためには、経理担当者が1人しかいない場合にはチェックリストを活用し、経理部門として複数人いる場合には1人で完結させるのではなく、二重のチェック体制を構築することが重要であると考えます。
そのためには、経理部門の事務効率化や経理人材の継続的な育成を行なっていくことが望ましいと考えます。
「これは何のために作成する資料ですか?」
当社では、このような質問をクライアント様にすることがよくあります。
そのような時には決まって
「前担当者から作るように言われて…」とか
「入社した時から作っているものなので…」という言葉が返ってきます。
これは、資料の形式的な作成方法の引継ぎを重視するあまり、なぜこの資料が必要なのか、という目的が十分に引き継ぎできていないことが主な原因となっています。
また、状況が常に変化する外部環境に対応するためには、継続的に作成資料をブラッシュアップしていくことが望ましいのですが、目的が十分に理解されていないため、決められた資料を作成することが仕事になっているのです。
これによって、あまり必要のないムダな業務が多く発生して不要な残業につながっているにもかかわらず、本来やるべき管理業務(売掛金、未払金の管理や資金繰りの管理)ができていないという本末転倒な状態になっているケースがよく見られます。
中には、経理業務の3割くらいがやらなくてもいい業務であったということもありました。
これを防ぐために、担当者の経理能力を育成しながら、担当者交代などの引き継ぎもスムーズにできるマニュアル作りが重要になってきます。
マニュアルを作成するという手間は発生しますが、業務見直しによるムダの排除とともに、担当者の日常業務が明確になるため、結果として経理業務が効率的になるのです。
経営をしていく上で、切っても切り離せないのが資金繰りの管理です。資金繰りを管理するためにポイントとなるのが資金繰り表の作成となります。
資金繰り表の作り方がわからないという声をよく聞きますので、今回は資金繰り表の作成方法を書いてみたいと思います。
今回ご紹介する資金繰り表の作り方は、はじめは手間がかかるかもしれないですが、銀行からの評価がいい資金繰り表が作れるようになりますので、ぜひマスターしてください。
それでは、資金繰り表を作っていきましょう。
資金繰り表を作るために最低限必要となるのは、以下の2つです。
まずは、エクセルに月次試算表を入力していきます。
エクセルにシートを3つ用意し、「資金繰り表」、「BS」、「PL」と名前を付けます。
(図1)
次に、用意したエクセルシートのうち、「BS」シートと「PL」シートに月次試算表を入力していきます。
まずは、「PL」シートに損益情報を入力します。
図2のように、B列に月次試算表の勘定科目、C列に当月(例ではH26/9月)の数値を入力します。できるだけ細かく、できれば月次試算表をそのまま入力すると後々便利になります。
(図2)
次に、 「BS」シートに貸借対照表の情報を入力します。B列に月次試算表の勘定科目を、C列に前月(例ではH26/8月)、D列に当月(例ではH26/9月)の数値を入力します。こちらも、できるだけ細かく、できれば月次試算表をそのまま入力するのがベターです。
(図3)
続いて、資金繰り表のフォーマットを作成します。
ここは、業種や会社によって違うと思われますので、一般的な形を書きます。こちらを参考にして、あなたの会社用にカスタマイズしてみてください。
まず、図4のようにB列に入金、出金別の主な項目を書いていきます。
(図4)
上から大項目として、
①月初現預金残高
②経常収支
③財務収支
④月中現預金増減
⑤月末現預金残高
を入力していきます。
ここで、少し注意点をあげておきますと、
②経常収支
経常収支の項目については、経常収入と経常支出に分けます。
経常収入は、売上収入とその他の収入に分類されます。一方、経常支出には、仕入支出が含まれます。人件費、外注費、経費などのその他の経費から、金額の大きな項目を厳選して入力します。図4では、「PL」シートから人件費、支払手数料、水道光熱費、租税公課を選んでいます。
③財務収支
財務収支は、借入収入と借入返済に分けます。
借入収入と借入返済の内訳としては、借入先別に入力すると、細かい管理ができるようになります。
引き続き、資金繰り表を作り込んでいきましょう。
①月初現預金残高と②月末現預金残高
まず、①月初現預金残高と⑤月末現預金残高からです(図5-1参照)
①月初現預金残高は、前月の現預金残高(H26/8月の現預金残高である「BS」シートのC4セルからリンクを飛ばす)になるようにしてください。
また、同様に⑤月末現預金残高は、当月の現預金残高(H26/9月の現預金残高である「BS」シートのD4セルからリンクを飛ばす)になるようにしてください。
(図5-1)
④月中現預金増減
④月中現預金増減は、図5-1のC28セルに月末現預金残高-月初現預金残高(=C29-C3)を入力することで、月中の現預金残高を計算します。
②経常収入
まず、売上収入です。
売上収入とは、本業である商品やサービスの販売から得られる現金、預金の収入であり、損益計算書(PL)の売上高と貸借対照表(BS)の売掛金の増減から算定できます。
算式としては
売上収入=当月の売上高(PL)+前月末の売掛金-当月末の売掛金
となります。
したがって、売上収入のセルには、PL!C3+BS!C5-BS!D5と入力してください。
また、その他の収入のセルには、売上以外の収入(通常は、PLシートの営業外収益の各項目)を入力してください。
(図5-2)
次に仕入支出です。
仕入支出は、本業として販売する商品の仕入や、製品を製造する際の原材料の仕入等に係る仕入先への支払い額です。
仕入支出も売上収入と同じように、損益計算書(PL)の仕入高と貸借対照表(BS)の買掛金の増減から算定できます。算式としては
仕入支出=-(当月の仕入高(PL)+前月末の買掛金-当月末の買掛金)
となります。仕入支出は現金預金のマイナスとなるため、上記式はマイナスになっています。
したがって、仕入支出のセルには、=(PL!C4+BS!C25-BS!D25)*-1と入力してください。
(図5-3)
また、仕入支出の下(図5-4の9行目以下)には、人件費や経費項目を入力します。
これらの項目については、経理処理の方法によって若干入力方法が変わってきますので、経理担当者や顧問税理士さんに確認しながら進めて頂ければと思います。
毎月の人件費や経費を支払時に費用処理している場合(現金主義)
この場合は、PLシートの当月(H26/9月)の人件費や経費計上額を資金繰り表に反映させることになるため、PLシートのCの列の各項目からリンクを飛ばしてください。
毎月の人件費や経費を発生時に費用・未払処理している場合(発生主義)
この場合、それぞれの項目ごとに支払サイトを確認する必要があります。よくあるのは当月末締めの翌月払いですが、この場合は前月(H26/8月)の経費計上額を当月の資金繰り表に反映させる必要があります(当月締めの当月払いであれば、当月(H26/9月)の経費計上額を資金繰り表に反映させます)。
(図5-4)
③財務収支
財務収支には、当月の借入金による収入や返済による支払額を記載します。
ここで注意して頂きたいのは、銀行への支払額のうち、借入元本部分と利息部分を可能な限り分けて入力して頂きたいという点です。分けておくことで、後々管理がしやすくなりますので、ひと手間かかりますがおすすめです。
もう一点注意して頂きたいのは、財務収支の入力金額は、経理処理上の金額(伝票など)と一致させておくことです。経理処理上の金額(伝票など)と一致していない場合、入力額が試算表とずれてしまうため、資金繰り表の精度が落ちてしまいます。
(図5-5)
ここまで入力すると、基本的な事項はすべて入力できています。
最後にチェックを行います。チェックポイントとして、経常収支の支払の中の「その他」が小さくなれば、概ねOKです。(図6参照)。
(図6)
この「その他」が大きくなっている場合には、他に調整すべき項目があるということですので、再検討が必要となります。調整項目としては、以下のようなものが考えられます。
項目 | 調整方法 |
---|---|
設備、車両など固定資産の取得 | 取得額を当月の支払項目に含めてください |
仮払金、仮受金、前払費用、未払金など、売掛金、買掛金以外の貸借対照表項目の増減 | 前月からの増減額を資金繰り表で調整してください。(資産項目の増加、負債項目の減少は資金のマイナス調整、資産項目の減少、負債項目の増加は資金のプラス調整) |
貸付の実行、回収 | 貸付の実行を資金のマイナス、貸付の回収を資金のプラスとして調整してください |
これで資金繰り表は完成です。
資金繰り表は、自社の作成方法が固まるまでは試行錯誤を繰り返す必要がありますが、ポイントを押さえたうえで作成方法がルール化できれば、簡単に作成することが可能となります。
資金の流れをきっちり管理するために、ぜひトライしてみてください。
お金の動きを分析をするためには、ある程度の会計の知識が必要になることです。特に、管理会計の知識がなければ、売上を増やすとコストがどのように動いて、利益がどう変わるか、といった関係がわかり辛く、手を焼くことになるかもしれません。
また、エクセルで資金繰り表を作るのが結構大変と思っている方もいらっしゃるかもしれません。エクセルは非常に優れたツールでゼロベースでいろいろなことができるのですが、裏を返せば、ゼロから作らないといけないので、大変な作業になってしまいがちです。私たちも以前はエクセルで資金繰り表のサポートをしていましたが、私たちプロがやっても、1社あたり毎月1〜2時間はエクセルの作業時間を費やしていました。
このように、お金の流れを分析するためには、会計の知識とエクセルなどのスキルが役立ちます。初めての方にはハードかもしれませんが、勉強しながら経営を先読みしてみてください。
ちなみに、簡単に経営のシミュレーションをするクラウドツールもあります。
クラウドツールを使えば、会計ソフトからデータを連携し、5分で会計の専門知識がなくても簡単に経営をシミュレーションすることができます。
「予算管理は、上場企業や大きな会社がやるもので、中小企業ではなかなかできないし、やらなくてもいいんじゃないの?」という質問を受けたことがあります。
確かに、個人事業や中小企業では、会計だけでも毎月請求書や領収書を整理したり、帳簿を付けたりと面倒な作業がたくさんあって大変なのに、予算までとなると絶対ムリ!となる気持ちもよくわかります。
一昔前なら、これも正解かもしれません。でも今は個人事業でも中小企業でも簡単に会計から予算管理までできる時代になっています。こちらについては、後述しますので、まずは予算管理をなぜ個人事業や中小企業でもやるべきかを説明します。
予算管理は、会社やお店の目標を設定し、目標を数値化し、メンバー全員の個別目標に落とし込み、全員で目標を達成することをきっちり管理しながら経営していくというものです。
よくあるイメージとして、予算管理は大企業や上場企業がやるというものです。
実はこのイメージ、正解です。
私は、これまで公認会計士として、これまで数十社の上場企業の監査(経理や社内体制のチェックをする仕事)をしてきました。
私が担当していた上場企業では予算管理を必ずやっていました。
なぜだかわかりますか?
予算管理をやらないと、欲しい利益を出すことが難しいからです。
だから上場企業では予算管理をやっています。
なぜ、予算管理をしないと利益が出ないかについては後ほどしっかり説明しますが、上場企業では必ずやっているというくらい予算管理は重要です。
では、なぜ中小企業で予算管理をやっていない会社が多いのかというと、儲けの秘訣が予算管理ということを知っている経営者が少ないからなのです。
予算管理を中小企業でやったらダメというきまりはどこにもありません。実際、中小企業でも儲かっている会社は予算管理をして利益を出しています。
利益を出すことに苦労されている社長と話をしていると、よく「それは大手の話だから関係ない」とか「上場企業がやってることをウチにできるわけない」というような捉え方をされる方がいらっしゃいますが、予算管理を大きな会社がやるものだから関係ないというような思考停止にならないでいただきたいのです。
もしかしたら、そのような社長のおっしゃるとおり、大手にしかできないやり方かもしれないですが、そこで切り捨ててしまったら、そこから先の成長や改善は見込めません。
当然業績もよくならないでしょう。
少しやわらかい頭で以下の話を読んでください。
上場企業は多くの株主がいて、利益を出すことに最も注力しています(これは、個人事業でも中小企業でも同じだと思いますが)。
利益を出さないとマーケットから退出しないといけないからです。
なので、上場企業は利益を出すために必要なことはすべてやっていますので、上場企業のやり方をマネすることが利益を出すためのヒントとなります。当然、予算管理もそのうちの一つの経営手法です。
ただ、上場企業は優秀な従業員も多く、おカネもたくさん持っているので、そのままマネすることはできません。
ここで、先ほどの儲からない社長は、工夫をせずに上場企業のやり方をそのままマネすることがムリとおっしゃっているのですが、それはその通りだと思います。同じやり方をマネしようとすると、さすがに「うちにはできない」となると思います。
重要なのは、
「利益を出すことに最も注力している上場企業がやってる方法が利益を出すための外せないポイントなんだから、中小企業のウチに使えるようにカスタマイズしながら上手にマネする」
という発想です。
このあたりをうまく学び、やってみて、修正しながら自分のものにしてきた会社が儲かっている会社なのです。
中小企業が利益を出すためには予算管理が欠かせないということを説明してきました。ここまででなんとなく中小企業でも予算管理が大事なんだと理解していただいているかと思いますが、実際何をやったらいいの?というところが腑に落ちていない方がいらっしゃるのではないでしょうか?
上場企業がやっている予算管理は緻密で複雑です。
しかし、中小企業でそこまでやる余裕は全くないはずです。じゃあどうするか?という問いに答えていきたいと思います。
中小企業でやるべき予算管理のポイントは、一言でいうと、「シンプルにする」ことです。
シンプルにしないと、予算管理にかける手間やコストが大きくなってしまい、運用が難しくなってしまいます。そして、放置されて絵に描いた餅になってしまった予算管理を多く見てきました。
では、どのような予算管理が中小企業にぴったりフィットするかというと、まず、予算管理で重要なのは、作った予算を放置しないことです。
予算管理が機能する前提として、PDCAサイクルをしっかりまわすことがもっとも重要ですので、放置されてしまうと意味がありません。
放置しないようにするためには、毎月の実績と予算を比較しやすくするのが大きなポイントとなります。
そこで、実績としてもっとも把握しやすく確実なものが会計となります。
会計をベースに予算を作っていれば、会計の実績(試算表など)が出れば簡単に予算と比較することができるようになるため、中小企業がシンプルに予算管理をしたいときにオススメの方法です。
予算を作る上で重要なポイントは、シミュレーションを繰り返しながら、経営者のイメージを数値に落としていくことです。
このあたりをいろいろなパターンでシミュレーションしながら予算を作っていかないと、実態からかけ離れた予算になってしまいます。
エクセルで予算を作る場合は、うまく式を組んだり、シートを使いながら、シミュレーションをしやすい予算作成をしてみてください。
中小企業の予算管理における3つ目のポイントは、社内のメンバーに予算を共有することです。
予算は、通常経営者が中心になって作ったり、管理したりすると思います。1人社長や個人事業主でスタッフがいない場合は、これでも問題ないのですが、事業のパートナー(家族も含む)やスタッフが数名でもいらっしゃる場合は、要注意です。
それは、実際に日々の事業活動を実行する社内のメンバーが予算の存在を知らなかったり、予算の作成や予算管理にタッチしていなければ、いくらきっちりした予算を作っても実行されないからです。
予算は実行されないと全くもって意味がありません。作った予算を社内のメンバーに共有し、しっかり巻き込むことで、全員で予算を追いかけていって、予算を達成することで、予算管理に大きな意味を持たせることができるようになります。
このように予算管理は小規模事業や中小企業が利益を出して、経営を安定化させるためには欠かせない経営手法です。
では実際にどのように予算管理をしていくかというと、一般的には会計データを会計ソフトからエクスポートして、エクセルなどの表計算ソフトで作っていくことになります。
エクセルは非常に便利なツールで、会計データがあれば、基本的な予算管理はできますし、編集などもできますが、いくつか難点があります。
まず1点目ですが、お金の動きを分析をするためには、ある程度の会計の知識が必要になることです。特に、管理会計の知識がないと、売上を増やしたら、コストがどのように動いて、利益がどう変わるかといったあたりの関係がよくわからなくなって、手を焼くことになるかもしれません。
次に、エクセルは非常に優れたツールでゼロベースでいろいろなことができるのですが、裏を返せば、ゼロから作らないといけないので、大変な作業になってしまいがちです。私たちも以前はエクセルで経営シミュレーションのサポートをしていましたが、私たちプロがやっても、1社あたり毎月1〜2時間はエクセルの作業時間を費やしていました。
ですので、経営を分析をするためには、会計の知識とエクセルなどのスキルがあればよりベターですので、大変かもしれませんが、勉強しながら経営を先読みしてみてください。
ちなみに、簡単に経営のシミュレーションをするクラウドツールもあります。
このクラウドツールを使えば、会計ソフトからデータを連携すると、5分で会計の専門知識がなくても簡単に経営をシミュレーションすることができます。
売上計画や売上予算を考える時に、どのようなアプローチで目標となる売上高を設定していますか?
過去の延長やイメージでザクっと設定するのも一案ですが、当社では逆算の思考プロセスでロジカルに設定する方法をオススメしています。
今回は、必要な利益を達成する計画や予算を作る時に欠かせない逆算の思考プロセスをご紹介します。
まずは、事業の儲けである利益がどのように計算されるかを確認しておきましょう。
ここでいう利益は、事業をするときの最終の利益である当期純利益とします。
当期純利益は、損益計算書や試算表の一番下に表示されている利益であり、売上などの収益から全ての費用を差し引いたトータルの儲けを示す利益となります。
このように、事業の儲けである当期純利益は、損益計算書の一番上にある売上高から、仕入や人件費、家賃、経費、さらには銀行からの借入金の利息など、上から下に向かっていろいろな費用を差し引い計算することになります。
このため、損益計算書や試算表を見る時には、無意識のうちに上から下に見る癖がついている経営者の方が多くいらっしゃいます。
ここで、一つ質問です。
損益計算書に表示されているいろいろな項目の中で、もっとも重要なものは何ですか?
この質問の答えに正解はありません。
損益計算書の一番上に表示されている売上高が一番重要と考える経営者の方もいらっしゃると思います。
しかし、私たちは、中小企業や個人事業など小さい事業を経営されている場合は、損益計算書でもっとも重要な項目は、一番下に表示されている当期純利益であると考えています。
なぜなら、売上高がいくら伸びていても、当期純利益がマイナスであれば、事業のお金がどんどん減少していき、資金繰りが悪化していきます。ひいては、資金がショートし、事業を継続していけなくなるからです。
売上が成長しても、事業が継続できないのであれば、意味がありません。
したがって、中小企業や個人事業を経営する場合には、当期純利益の水準を常に意識して経営の舵取りをしていかないと安定した事業経営はできないと思います。
そのため、損益計算書では、一番下に表示されている当期純利益を起点に予算や事業計画を組み立てることが、経営を持続させる、経営を安定させるための大きなポイントとなります。
先ほどご紹介しましたように、多くの経営者は、無意識のうちに損益計算書を上から順番にみて、意思決定の判断材料を探そうとしています。
そうすると、ミスリードが生じる可能性があります。
それは、売上の変動に目がいってしまい、売上を伸ばすことのみに過度に注力してしまったり、一喜一憂してしまうことで、正しい意思決定ができない可能性があることです。事業経営をしていると、売上を伸ばすことや、利益を度外視して投資をすることも必要なフェーズがあると思います。
特に、起業して間もない場合や、スタートアップ企業の場合は、特に利益を求めるよりも売上を軌道に乗せることが重要なタイミングは必ずあります。
なので、利益よりも売上を重視することを否定するつもりは全くないのですが、一方で、経営をしていく上で重要な経営資源はお金です。
いくら事業の成長が見込まれていても、お金がなくなった時点で全てが強制終了となってしまいます。したがって、利益よりも売上を重視しなければならない経営者ほど、当期純利益の水準を常にウォッチし、最低ラインをコントロールしていかないと事業は継続できません。そこで重要になるのが、逆算の思考プロセスです。
逆算の思考プロセスとは、当期純利益からスタートし、損益計算書を下から上に見ていきながら、意思決定をしていく思考プロセスをいいます。
この逆算の思考プロセスは、事業計画や予算を作ったり、投資や費用投下をするときに、どのレベルまで許容し売るかを考える際に非常に使い勝手がよくなります。
まずは、過去データである試算表や損益計算書を逆算の思考プロセスで見る場合の使い方をご紹介します。
この例であれば、まずは、最も重要な項目である当期純利益からスタートして、この利益を稼ぐためにどのような費用がどれくらい発生したかを見ていきます。
次に、これらの費用をまかなうためにどのくらいの売上総利益が必要だったかを見ていきます。
最後に、売上総利益の源泉となった売上高を確認します。
次に、過去データの損益構造から、将来の損益モデルを逆算で作っていきます。
まずは、来月に達成したい利益の水準を決めます。この事例では、当期純利益2,000を目標利益として設定します。
次に、来月の予定から想定される費用を見積もってコスト予算を設定していきます。
そうすると、目標の当期純利益にコスト予算を加えると、目標となる売上総利益が計算されます。
(予算)売上総利益 = 目標当期純利益 + コスト予算
ここまでで、売上総利益の予算額が決定しました。
この売上総利益の金額を売上総利益率で割り戻すことによって、目標となる売上高が逆算で計算されます。
このようにして、目標となる当期純利益から逆算で目標売上高を計算し、来月の損益モデルを作ることで、具体的に来月していかなければならないことを数字で理解できるようになります。
以上のように、会計データも逆算の思考プロセスで見ていくことによって、経営に具体的に活用することができます。
特に、ゴールである当期純利益を明確に意識することは非常に重要です。
売上高は、直感的にイメージしやすく、日々の営業や事業運営に直接関係するものであるため意識しやすいのですが、当期純利益は、売上高にいろいろな項目を足したり引いたりと複雑で、直感的に理解しにくいため、後回しにされがちです。
しかし、経営(特に中小企業や個人事業といった小さい会社での事業経営)においては、キャッシュの増減に直接関連してくる当期純利益が非常に重要な経営指標となります。
できるだけ損益構造をシンプルに捉えるとともに、経営のゴール設定を当期純利益と置いて、逆算の思考プロセスで意思決定に使っていただけると経営のコントロールがしやすくなると思いますので、ぜひトライしてみてください。