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2025年6月27日

デイサービスの経営は厳しいのか?原因と改善ポイントを解説

デイサービスの経営は厳しいのか 表紙

近年、デイサービス(通所介護)の経営環境が厳しさを増しています。介護報酬の改定や競争の激化により、収益が圧迫される一方で、人材確保が困難な状況が続いています。これに加え、コロナ禍の影響も深刻で、多くのデイサービスが経営的な課題に直面しています。この記事では、デイサービスの現状を分析し、厳しい状況の背景にある要因を掘り下げるとともに、経営改善のための具体的なポイントを提案します。

▼「介護業界における経営管理」の解説動画

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デイサービス(通所介護)業界の市場動向

デイサービス(通所介護)の需要推移

デイサービスの需要は年々変化しています。特に日本の高齢化が進む中で、このサービスに対するニーズが高まりつつあることが背景にあります。

令和6年版高齢社会白書によると、国内における65歳以上の高齢者の数は、3,623万人となり、その数は今後も増加する見込みです。高齢者住宅新聞によると、デイサービスの利用者数も増えており、2023年時点でデイサービスの利用者数は約222万人となっており、高齢者の在宅生活を支える中核的なサービスとなっています。

高齢化社会とデイサービスの需給バランス

高齢化が進むとともに、介護を必要とする高齢者が増加し、それに対応するサービスの重要性が増しています。特に、デイサービスは自宅に居ながら社会参加を促進することができるため、多くの家族にとって便利な選択肢となっています。

地域差とニーズの変化

一方で、デイサービスの需要には地域差も存在します。都市部では交通の便が良いため、デイサービスが利用しやすいですがその反面、地方では利用者が少なく、サービスの継続が難しい地域もあります。また、利用者のニーズも多様化しており、リハビリテーションや趣味活動を希望する高齢者が増えています。これに対応するため、各デイサービス事業者はサービス内容の充実を図る必要があります。

これらの要因から、デイサービスの需要は今後も堅調に推移することが予想される一方で、経営にはさまざまな課題が伴うことを理解しておくことが重要です。特に、収益性の確保や質の高いサービスの提供が求められています。

2024年度に行われた介護報酬改定

2024年度の介護報酬改定は、「地域包括ケアシステムの深化・推進」「自立支援・重度化防止に向けた対応」「良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり」「制度の安定性・持続可能性の確保」を基本的な視点としています。新しい報酬体系は、収益構造やサービスの提供方法に変化をもたらすと考えられます。

改定内容についてのポイントを紹介します。

基本報酬の見直し

全体として、令和6年度の介護報酬改定率は+1.59%であり、そのうち+0.61%が各サービスの経営状況に配慮しつつ基本報酬に配分されることになっています。このため、通所介護の基本報酬もこの範囲内で見直されていると考えられます。

入浴介助加算の見直し

入浴介助加算(Ⅰ)の算定要件として、入浴介助に関わる職員に対する研修の実施が新たに義務付けられます。入浴介助加算(Ⅱ)については、医師等が利用者の居宅への訪問が困難な場合、医師等の指示の下、介護職員が情報通信機器等を活用して状況把握を行い、医師等が評価・助言した場合でも算定可能となります。

通所系サービスにおける送迎に係る取扱いの明確化

送迎先について、利用者の居宅に加えて居住実態のある場所(例えば近隣の親戚の家)も可能となります。他の介護事業所や障害福祉サービス事業所の利用者との同乗が可能となります。

介護報酬改定を踏まえ、経営者は今後の戦略を再評価し、変化に迅速に対応することが求められます。デイサービスの経営が厳しいと感じる多くの経営者にとって、この改定が明るい未来を切り開くための一助となることを期待します。

デイサービスの倒産件数

老人福祉・介護事業の倒産件数 年次推移

出典:株式会社東京京商工リサーチ(2025年3月31日参照)

デイサービスの倒産件数は、近年増加傾向にあります。これは業界全体の収益の厳しさや競争の激化などが影響しています。

株式会社東京京商工リサーチの調査によると、2024年「介護事業者」倒産が過去最多の172件でした。
「訪問介護」が過去最多の81件、デイサービスなど「通所・短期入所介護」は、約30社の連鎖倒産が押し上げた2022年(69件)に次ぐ56件と、過去2番目の倒産数となったと報告されています。

倒産の背景には、経営環境の厳しさやサービスの差別化ができていないこと、さらには新型コロナウイルスの影響など、さまざまな要因が複雑に絡んでいます。また、特に小規模な事業所では資金繰りが難しくなり、運営が困難になるケースが多く見られます。

倒産の原因と考えられる要素

デイサービスが倒産する主な原因には、収益の減少が挙げられます。介護報酬の改定や利用者数の減少が影響し、必要なサービスを提供し続けることが経済的に難しい状況に陥ることがあります。また、人材確保ができないことでサービスの質が低下し、結果として利用者が減少する悪循環も生じます。後ほどデイサービスの経営が厳しい原因について詳しく解説します。

デイサービス(通所介護)の経営が厳しい原因

収益の減少

デイサービスの経営において収益の減少は大きな課題です。特に近年では、さまざまな要因が重なり合い、収益性が低下している施設が増えています。この章では、収益が減少している理由やその背景について詳しく説明いたします。

厚労省の調査によると、通所介護事業所の収支差率は、令和2年度から令和3年度にかけてコロナ補助金の有無に関係なくマイナスになっています。

全サービスと比較しても税引き前の収支差率は2022年度決算において1.5%となっており、全介護サービスの平均よりも低い水準となっています。

【デイサービス(通所介護)の収支差率】

通所介護・全サービス平均の収支差率推移 1

出典:令和4年度介護事業経営概況調査結果の概要令和5年度介護事業経営概況調査結果の概要を元に編集・加工(2025年3月31日参照)


2021 年度(令和 3 年度)通所介護の経営状況についてのデータでも、2021年度の通所介護事業所の経営状況は悪化傾向にあります。介護報酬改定で基本報酬が引き上げられたものの、利用者1人1日当たりのサービス活動収益は2020年度と比較して低下しました。さらに、サービス活動収益対経費率の上昇により、サービス活動増減差額比率と経常増減差額比率が低下し、赤字事業所の割合が46.5%に増加しました。

2020年2021年
利用者単価9,412円9,221円-192円
サービス活動増減差額比率2.8%1.5%-1.3%
経常増減差額比率3.1%1.7%-1.4%
赤字事業所割合41.9%46.5%4.6%

出典:2021 年度(令和 3 年度)通所介護の経営状況について(2025年3月31日参照)

経費の上昇要因

経費率上昇の要因として、光熱費の高騰と利用者単価の低下が挙げられています。利用者単価の低下は、一部加算の算定要件の変更や、新型コロナウイルス感染症対応のサービス提供時間に係る特例措置の廃止が影響しています。

過去5年間の経営状況を見ると、介護報酬改定による利用者単価の変動はあるものの、赤字事業所の割合は年々拡大しています。これは、収益が横ばいであるにもかかわらず、従事者1人当たりの人件費が上昇しているためです。

赤字事業所は、黒字事業所と比較して利用率が低く、利用者10人当たりの従事者数が多い傾向にあります。登録者数の確保と利用率の改善、適切な人員配置が急務です。

事業規模別に見ると、通常規模型(定員19人以上かつ前年度の1月当たり延利用者数750人以内)の赤字事業所割合が最も高く、経営状況が厳しい状況です。これは、利用率が低いことや、加算の算定状況が影響していると考えられます。

安定的な経営のためには、利用率70%以上の維持が重要であると考えられます。

人材確保・定着の難しさ

人材の確保と定着は、デイサービスの経営において非常に重要な課題です。特に介護業界は、人手不足が深刻化しており、職員が安定して働き続けられる環境を整えることが求められています。

介護事業経営実態調査のデータ分析|厚生労働省老健局によると、介護関係職種の有効求人倍率は3.95と全職業の1.46と比べて、依然として高い水準にあります。

また、従業員が不足している理由については、88.5%の介護事業所が「採用が困難である」と回答しており、その背景には他産業と比較した労働条件の悪さや、同業他社との人材獲得競争の激化があるとしています。

競争の激化

競争が激化する背景には、利用者のニーズの多様化があります。高齢者が求めるサービスはますます多様化しており、ただ単に介護を提供するだけではなく、趣味活動やリハビリ、健康管理といった要素を組み合わせたサービスが求められています。このようなニーズに応えるためには、経営者は自らのサービスを常に見直し、改善していく必要があります。

さらに、企業間での差別化も重要です。近年では、他事業者と差別化するために、地域に特化したサービスや、独自のプログラムを提供する事業者が増えてきています。このような動きに対応できない場合、顧客を他の施設に奪われるリスクも高まります。

また、報酬改定により収益構造が変化し、より効率的な運営と利用者確保の両立が求められています。

このように、デイサービス業界の競争は、数値的な増加だけでなく、質的な側面でも厳しさを増しています。これに対処するためには、独自の工夫や戦略が求められる時代に突入しています。

コロナ禍がデイサービス経営に与えた影響

コロナ禍はデイサービスの経営に多大な影響を及ぼしました。具体的には、利用者の減少、安全対策の強化、そして運営コストの上昇が主な要因です。これらの要素は、経営の厳しさを増す結果となりました。

まず、コロナウイルスの影響で多くの人々が外出を控えるようになりました。その結果、デイサービスを利用する高齢者が減少し、経営側は収入の減少に直面しました。このような減少は、一時的なものではなく、心理的な影響もあって利用者の回復が遅れている現状です。

次に、安全対策の強化が必要となり、結果的に運営コストが上がりました。具体的には、消毒や感染予防のための設備投資が必要で、さらにスタッフのトレーニングも行わなければなりませんでした。これにより、経営が圧迫される事態が発生しました。また、感染防止のために利用者数の制限を余儀なくされ、これもまた収益を圧迫する要因となっています。

さらに、これらの影響は業界全体に波及しています。デイサービスの多くが同様の状況に置かれており、収益の回復が見込めない中で、競争がさらに厳しくなるという側面もあります。同業者同士の競争が激化することで、価格競争に陥り、結果としてサービスの質の低下を招く懸念が広がっています。

このように、コロナ禍による直接的な影響だけでなく、経営環境全体の変化を考慮することが重要です。今後も引き続きこの状況を注視し、柔軟に対応する必要があります。

デイサービス(通所介護)の経営改善をするには

加算取得の最適化

加算取得の最適化は、デイサービスの収益を向上させる重要な手段です。適切に加算を取得することで、収益の安定化だけでなく、より質の高いサービス提供が可能になります。まずは、加算の種類や、その取得に向けたポイントについて詳しく見ていきましょう。

個別機能訓練加算:機能訓練指導員を配置の上、利用者の身体機能や生活機能の向上を目的とした個別的な機能訓練を実施した場合に算定できます。

口腔機能向上加算:口腔機能の向上を目的としたサービスを提供した場合に算定できます。

ADL維持等加算:利用者の日常生活動作(ADL)の維持・改善に努めた場合に算定できます。

栄養改善加算:栄養状態の改善が必要な利用者に対して、栄養改善サービスを行った場合に算定できます。

入浴介助加算:入浴介助を行った場合に算定できます。

認知症加算:認知症の利用者に対して特別なケアを提供した場合に算定できます。

科学的介護推進体制加算:2021年報酬改定で新設されたLIFE(科学的介護情報システム)を活用して、科学的根拠に基づく介護を推進した場合に算定できます。

介護職員処遇改善加算:介護職員の処遇改善に取り組む事業所に対して算定される加算です。2024年の改定で一本化され、4段階の加算区分が設けられました

加算取得の最適化に向けては、各加算の算定要件を正確に理解し、必要な体制を整備することが重要です。

サービスの差別化

サービスの差別化は、デイサービス経営において競争を勝ち抜くための重要な要素です。

利用者のニーズ

差別化を図るためには、利用者のニーズを把握することが必要です。たとえば、高齢者が特に興味を持つ活動や趣味を取り入れ、個々の生活スタイルに合わせたプログラムを設計することができます。また、食事に関しても、地域の特産物を使ったメニューや、栄養士による健康的な食事を提供することが、一つの差別化要因となるでしょう。

スタッフの質や接客サービス

スタッフの質や接客サービスの向上も重要です。専門知識を持ったスタッフが、個別対応やコミュニケーションを通じて利用者との信頼関係を築くことで、他の施設との差別化が図れます。例えば、認知症に特化したトレーニングを受けたスタッフを配置することも、一つのアピールポイントになります。

地域に根ざしたサービス

地域に根ざしたサービスを展開することも効果的です。地域の行事やイベントに参加したり、地元のボランティアとの連携を図ることで、地域社会とのつながりを深めることができます。これにより、利用者が「ここに来てよかった」と感じるような、地域密着型のデイサービスを目指すことができます。

最新のテクノロジーの活用

最新のテクノロジーを活用することも差別化の一環として考慮すべきです。ウェアラブルデバイスやモバイルアプリを導入することで、利用者の健康管理やアクティビティの記録を行い、保護者や家族と情報を共有することが可能になります。このような新しい取り組みは、他の事業所との差別化につながることでしょう。

このように、サービスの差別化においては、利用者のニーズ理解、スタッフの質、地域とのつながり、そしてテクノロジーの活用が鍵となります。これらをバランス良く取り入れていくことで、競争の激化するデイサービス業界での優位性を確立することが可能です。

IT活用による業務効率化

ITを活用することは、デイサービスの業務を効率化し、経営の厳しさを乗り越えるために重要です。テクノロジーの主な利点は、作業の自動化、データの一元管理、そしてコミュニケーションの向上です。これにより、リソースを有効に活用し、サービスの質を向上させることが可能になります。

まず、業務の自動化について考えてみましょう。デイサービスでは、利用者の情報管理やスケジュール調整、請求業務など多くの作業があります。例えば、自動化システムを導入することで、これらのプロセスが効率的に行えるようになります。実際に、業務の自動化が実現すれば、職員の負担が軽減され、その結果、職員の定着率の向上にもつながる可能性があります。

次に、データの一元管理も重要なポイントです。利用者の健康状態やサービス利用状況を一元的に管理することで、情報の共有がスムーズに行えます。これにより、職員全員が利用者のニーズに迅速に対応できるようになります。具体的には、クラウドベースの管理システムを導入することで、どこからでもデータにアクセスでき、情報がリアルタイムで更新されるため、緊急時にも迅速な判断が下せるようになります。

さらに、コミュニケーションの向上もIT活用の大きな利点です。職員同士や利用者とのコミュニケーションが円滑になることで、サービスの質も向上します。ビデオ通話やチャットツールを活用することで、情報交換や意見交換が容易になり、より良いサービス提供につながるでしょう。

このように、IT活用による業務の効率化は、デイサービスにとって不可欠な戦略です。業務が効率化されることで、サービスの質が向上し、結果的に利用者の満足度が高まることが期待されます。

まとめ

喜多佑介

デイサービス経営の厳しさは、収益の減少や競争の激化、人材確保の難しさなど多岐にわたります。介護報酬の改定やコロナ禍の影響も相まって、経営者はますます厳しい状況に直面しています。しかし、この厳しい環境を乗り越えるためには、加算取得の最適化やサービスの差別化、ITの活用による業務効率化が不可欠です。適切な戦略を立て、柔軟に対応することで、経営の安定を目指しましょう。

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この記事の監修者

この記事の監修者

喜多佑介

喜多 佑介

株式会社ナレッジラボ BizOpsチーム責任者
東芝テック株式会社にて予実管理・中期経営計画の策定やM&A案件など複数のプロジェクトを推進。その後、株式会社エックスラボでデジタルマーケティング支援を担当。 2023年より株式会社ナレッジラボに参画し、営業副責任者を経て、現在はBizOpsチーム責任者として拡販体制の構築を推進。
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