持続可能なスポーツになるために、自分事として捉えられる予実管理の仕組みを構築

持続可能なスポーツになるために、自分事として捉えられる予実管理の仕組みを構築

2023/10/25

一般社団法人日本フライングディスク協会 齋藤 勇太 様、淺井 天音 様

フライングディスクの普及を目的とした各種全日本選手権の開催や、世界大会への選手派遣、各地での指導普及活動や国際大会の誘致などを実施などを行っている、一般社団法人日本フライングディスク協会様。組織規模の拡大に伴い、持続可能な組織にするため、はじめての予算管理ツールとしてManageboardをご導入いただきました。導入を経て、予実を自分事として捉える風潮が醸成され、「良い意味でリソースも考慮した施策を実施できるようになった」とのことです。詳しいお話を同協会の齋藤様、淺井様に伺いました。

選手から協会組織の運営へ、世界規模の競技の裏側とは

貴協会の事業について教えていただけますでしょうか。

我々はフライングディスクの普及を目的とし、1975年に設立された協会です。
日本オリンピック委員会や日本スポーツ協会などの組織にも加盟しており、全日本選手権大会の開催や、世界大会への選手派遣、小学校や自治体への普及活動や国際大会の誘致などを行っております。
当協会の運営に携わっているほとんどの方は、普段は別の仕事に就いているボランティアやパートタイマーであり、フルタイムの従業員数は5名の組織です。そのため、5名の従業員は特定の部署に個別に所属しているのではなく、複数の役割を担って日々の業務にあたっております。

―齋藤様、淺井様はフライングディスクの選手としてのご経験もあると伺いました。簡単にお二人のご経歴について教えていただけますでしょうか。

齋藤様:フライングディスクという競技には、大学のサークルで出会いました。さまざまな大会に参加する中で、U20チームとして世界大会に出場したこともありました。

当協会との関わりにおいては、日本で開催された世界大会に運営として携わったことが大きなきっかけとなりました。とても魅力的な競技である一方で、大会スタッフ数がとても少なく、ギリギリの状態で運営されている実情を体感しました。

この経験を経て、フライングディスクにより多くの時間を使おうと考え、大学卒業後に当協会の職員となりました。
協会職員としては、経理などバックオフィスはもちろん、世界大会への選手派遣など、幅広く携わってきました。

競技人口も増え、求められる業務の範囲や扱う金額も大きくなったため、協会の先輩はもちろん、外部の有識者に話を聞くなどして日々学びながら業務にあたっております。

淺井様:私も齋藤さんと同じく、競技との出会いは大学のサークルで、U20チームとして世界大会に出場したこともありました。

大学生の頃、国際大会の日本誘致にボランティアとして参加したことから、協会との関わりが深くなっていきました。ボランティアの先輩方から、競技の話だけではなく、大会運営がどのように行われているかを聞き、「自分もこのような大会を開催したい」と大きく心を動かされたことが転機となりました。

まずはキャリアを築きたいと考え、大学卒業後の数年間は別の企業に就職し、副業として協会に在籍していましたが、現在は協会職員として勤務しています。
前職ではマネジメント領域のコンサルティングをしており、横ぐしで物事を俯瞰することができるようになりました。当協会でも、少ない人数でどのように成果を上げていくか、という観点でこれまでの経験を活かして行きたいと考えています。

表計算ソフトで感じた限界からシステムでの予実管理へ

―Manageboard導入前の予算管理方法についてご教示いただけますでしょうか。

正直なところ、年に一回理事会前に予算を作成するのみでした。そのため、「予算と実績を基に意思決定をする」ということまで手が回っていませんでした。

可能な限りコストを掛けないことに注力をしていましたが、予実に基づく運営判断があれば「施策の効果を出すために、もっと予算を使っても大丈夫そうだ」という判断ができたかもしれません。

―どのようなことがきっかけで予実管理を本格的に始められたのでしょうか。

まず、大会数や活動規模が拡大したことで、リソースの管理が必要になる場面が多くなってきたことが一つです。
次に、コロナ渦に金融機関から借入をするために、数年分の精緻な計画作成が求められたことです。
そして、スポーツ庁から「スポーツ団体ガバナンスコード(※)」の遵守を求められるようになり、組織基盤の整備を求められたことが、予実管理を始める大きなきっかけになりました。

※スポーツ団体ガバナンスコード
スポーツ団体の中でも特に高いレベルのガバナンスの確保が求められる中央競技団体が適切な組織運営を行う上での原則・規範を示すものです。
各中央競技団体においては,令和2年度以降,その遵守状況について,年1回の自己説明及び公表を行うことが求められます。また,統括団体による「適合性審査」を受ける必要があります。

出典:「スポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体向け>」スポーツ庁、https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop10/list/detail/1420887.htm(2023年8月25日参照)
―なぜ、表計算ソフトではなく、システムでの予実管理にしようと考えられたのですか?

スポーツ団体ガバナンスコードの遵守を考えたときに、表計算ソフトで行う予実管理には標準化の限界があり、システムに落とし込むことでノウハウが蓄積され、業務の標準化が実現できるのではないかと考えたためです。

このガバナンスコードにおいては、ノウハウの蓄積や組織の新陳代謝を高めることを求められています。すなわち、引継ぎしやすい組織にしなければならないということです。

以前に金融機関からの借入を行った際、表計算ソフトで数か年の計画を作成したのですが、完成したものは、誰もが一目で理解できるファイルであるとは言い難いものでした。また、関数の参照先がエラーになると、膨大な情報量の中からデータを探さないといけないことにもなり、苦労したこともありました。

これらの経験から、多くの人がボランティアとして在籍している当協会において、表計算シートでの予実管理は、引継ぎコストや属人性の面からも、ガバナンスコードの遵守に繋がりにくいのではと考え、システム化に舵を切りました。

会計ソフトとのAPI連携により、業務の煩雑さを減らして効率的に

―Manageboard導入の決め手はどのようなところにありましたか?

freee会計との連携、そして、IT導入補助金を活用できたことが大きな理由です。特に、会計ソフトの実績データをManageboardに取り込むことで、予実のデータを一元管理できるという点が決め手となりました。

また、Manageboardなら、表計算シートでの予実管理よりも作業量を増やすことなく、効率的に予算管理ができそうだとデモンストレーションで感じたことも理由の一つです。

―Manageboard導入の決め手はどのようなところにありましたか?

都度の不安はカスタマーサクセス担当の方に相談しながら解消していました。もし、マニュアルだけで解決するような進め方だと、途中で挫折していたかもしれないですね。

理事会内の変化、予実差を自分ごととして捉えられるように

―Manageboard導入後、どのように課題が解決されましたか?

まず、各事業担当者の間で予算・実績を気にする空気感が大きくなりました。行いたい施策に対して、事前の情報収集をすることが増えたように思います。
スポーツ団体という特性上、競技への情熱が先行して施策が進んでしまうことも多いのですが、Manageboard導入を経て、以前より「良い意味で」リソースにも気を使って物事が進められるようになりました。
Manageboardは情報を自分で見に行くことができるツールなので、「予実管理は制約ではなく、協会をより良くするためのリソースである」という感覚も生まれてきました。

また、さまざまな大会を行う上で、「会計上の正しい情報をリアルタイムに集めよう」という風潮が生まれ、経費精算の早期化などの意識づけも広がりました。

―気に入っている機能はございますか?

推移表のレポートで着地見通しを見る機能が気に入っています。
表計算ソフトで管理していた頃は、実績と予算、2つのシートを並べて見ていたので、一つの画面で着地見通しを見ることができるのはとても便利になったと感じています。

※画像はManageboardの業績見通し画面のサンプルです

―協会内の皆様の反応はいかがでしょうか?

表計算ソフトを使用して、複雑さや計算式が壊れたりする不便さを実感していたので、「シンプルでわかりやすい」というのがManageboardへの一番の感想です。
全体感を見て事業を俯瞰し、自分ごととして捉えることができるようになったので、楽しくレポートを見ることができています。

スポーツも予実管理も自分に合ったツールに出会えるかがカギ

―今後、Manageboardで実現していきたいことについて教えてください

スポーツ団体ガバナンスコードで求められる「組織の基盤整備」という考え方や、Manageboardを通して得た知見を、各都道府県フライングディスク協会や、他のスポーツ協会にも広めていきたいです。展開の可能性が高いのもデジタルツールのいいところですね。

―フライングディスクの発展に必要なものや、今後の展望について教えていただけますか。

フライングディスクの発展には、組織の基盤整備が重要だと考えています。
スポーツが国内で存続していくためには、まず、人が入れ替わっても協会が存続していけることが求められます。
組織の基盤をいかにシステムに落とし込めるかによって、理解コスト・引き継ぎコストなどの削減にも繋がるので、デジタルを使って持続可能性を高めていきたいです。

Manageboardはその一環であり、予実管理という「適切な組織」を運営するために必要な管理を行えることが重要だと考えています。

日頃の普及活動の中で、「スポーツ全体や身体を動かすこと自体に苦手意識を抱いている」という話を耳にすることがあります。ただ、それは偶然関わった競技と相性が合わなかっただけで、きっとその人に合ったスポーツがどこかにあるのではないか、と考えています。
きっと、予実管理においてもそれは同じで、「自分に合ったツールに出会えるかどうか」が大きなポイントなのではないでしょうか。

フライングディスクは、「投げる・取る」のラリーが純粋に楽しいスポーツなので、「経験値を問わず、すぐに成功体験を味わうことができる」と伝えています。Manageboardも同じように、これから予算管理を本格化させたい方にも、抵抗感なく関わりやすいツールなのではないかと思います!

会社概要

一般社団法人日本フライングディスク協会

フライングディスクの普及を目的とした各種大会の開催や、世界大会への選手派遣、各地での指導普及活動や国際大会の誘致などを実施

https://www.jfda.or.jp/

※上記インタビュー内容は2023年8月1日時点の情報です。